CSSとの出会い・苦難・克服(堀内 敬子)

出会い

「テーブルレイアウトしかやりませんね。CSSは必要性を感じていないというか......」

以前、仕事でご一緒したフリーランスのWebデザイナーの方がいっていた言葉です。たしか2006年ごろだったと思いますが、CSS大好きであったわたしは少なからず衝撃を受けました。

何か新しいものを学習する動機は、大きくふたつにわけられます。「面白そうなので学習する」と「必要だから学習する」というパターン。わたしはどちらかといえば前者が多いのですが、CSSに関しては「面白そうだ」「フルCSSで制作してみたい」とウズウズしていた期間が長めにあって、実際に手をつけたのが 2004年。XHTML+CSSでの制作が、費用対効果などビジネス的にもオーケーと受け入れられはじめた時期です。つまり、「面白そうだ」に「今後、必要だ」という意識をプラスした最強の状態です。そのころにはCSSの書籍も数冊出ていたので、2冊をチョイスして基礎固めし、わからない部分は検索をするというスタイルで学びました。

冒頭のWebデザイナーさんにとって、CSSはおそらく「面白そう、やりたい」とは思えないもので、さらに「必要性」もまだ感じていなかったのだと思います。その後、一度だけ制作案件でチームを一緒に組み、CSSレイアウトを採用したことがありました。それをきっかけに、必要性や便利さを実感してくれたならイイなとひそかに思っていますが、その後、氏の消息は定かではありません。

のっけから微妙に話がずれているような気もしますが、書籍とネットで学びはじめた2004年が、わたしとCSSの出会いというわけです。

苦難

「学んだことは実践したい!」ということで、CSSレイアウトでWebサイトを制作をさせてくれるクライアントを探しましたがなかなか現れません。それがわたしの苦難でありました(ちなみにCSSそれ自体に対する苦しみは忘れてしまって、楽しい思い出ばかりです。なぜなら、問題は乗り越えたときには達成感に変わるので)。

「CSSのメリットはたくさんいえるのに、経験がないためゴーサインが出ない」というのは、自分の発言力や影響力の低さに対する悩みとあいまって、その後の学習意欲の増大や会社設立にもつながっていくのですが、それはまた別のお話。

XHTML+CSSでの制作は、2004年後半に実現する機会が訪れました。知人が「新しく会社をはじめるのでサイトをつくってくれないか、できれば安く」といってきたので、安くする代わりにXHTML+CSSでつくることを了承してもらったというわけです。CSSの経験はゼロ、知識も初級レベルという状態で、サイトを丸ごと、しかもページ数が多く階層も深いときて、いま思えば無謀なのですが、やればできるものですとニヤニヤしておりました。このような初心者にCSSでの制作を許してくれた知人にはいまも感謝しています。

で、苦難はここで終わりといいたいところですが、そうではありませんでした。

克服

2004年までの5年ほどはずっとテーブルレイアウトでしたので、すっかりテーブル脳ができあがっていました。デザインを見るとテーブルの入れ子状態や、画像をスライスする線が浮かんでくるのです。そこに突然、デザインを文書構造やフロートなどに変換するCSS脳を加えたことになり、多少の混乱がありました。完全にスイッチできればよかったのですが、その後のすべてがCSSでの制作にできるわけではありません。どうすればCSSのメリットを説得できるか悩む日々でもありました。

やがて時間とともに会得したのが、「説得」せずに「納得」してもらう方法です。「これが時代の流れです」とお話しするだけ。効率化やメンテナンス性の向上などどのようなメリットを強調するよりも、すんなりと了解していただけました。もちろん心からそう思っていましたし、その後クライアントさんには「時代の波に乗っている感」のほかに、本来のCSSのメリットも実感してもらえました。

学習には「やりたい」と「必要」のふたつのパターンがあると書きました。冒頭のWebデザイナーさんはその人なりに「必要」だと思える瞬間を待っていたわけで、それば現実的な「解」なのかもしれません。本当に学習した内容が身につくのは「必要」のほうだと思います。自分のキャリアパスに「必要」な技術や知識なら、必然的に興味が深くなり、吸収度も高くなります。継続して学習や経験もできます。上記のような苦難を乗り越えるチカラも湧いてきます。この本を手にしてくれたみなさんも、自分なりの必要性をもう一度よく考えてみると、また違ったチカラが湧いてくるかもしれません。

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